2020.02.27
瑕疵担保責任から契約不適合責任に その違いは?
いよいよ2020年4月民法改正が近づいてまいりました。売主の「瑕疵担保責任」が廃止され新たに「契約不適合責任」という責任が売主に課させることになります。
今回は「瑕疵担保責任」と新たに施行される「契約不適合責任」の違いについてお伝えします。
「瑕疵担保責任」では買い主が、売買契約の目的物(購入した戸建住宅やマンションなど)を購入した時点で、明らかになっていない「隠れた」瑕疵があった場合請求できる権利は「損害賠償請求」と「契約解除」の2つでした。瑕疵担保責任による契約解除は「契約の目的が達成できないとき」に限られていました。
2020年4月より施行される「契約不適合責任」では売主が契約と違うものを売れば、契約不適合ということになります。
隠れた瑕疵の「隠れた」という概念も廃止され、「契約内容に合致しているかどうか」が問われることになります。
また、契約不適合責任では、「損害賠償請求」と「契約解除」に加え「追完請求」と「代金減額請求」が新たに追加されます。
1)内容の変更について
同じ損害賠償請求、契約解除等でも内容が異なるので十分に内容を把握することが必要です。
①損害賠償請求
「信頼利益」の範囲にとどまらず、「履行利益」までも含まれます。履行利益とは、その契約が履行されていればその利用や転売などにより発生したであろう利益です。
追完請求や代金減額請求とあわせて損害賠償請求ができるようになります。
②契約解除
契約の目的が達成されるときでも解除が可能になります。契約解除も追完請求や代金減額請求とあわせて請求できるようになっています。
③「追完請求」
追完請求とは、言い換えると「修繕依頼」のことです。買主が売主に対して引渡後に追完請求ができるようになります。
追完請求については、売主が不適合部分につき無過失(わざと壊したものではない)の場合でも認められます。
④「代金減額請求」
追完請求をしても売主が修補しない、あるいは修補不能であるときに、代わりに代金を減額することができるという権利です。
原則として、追完の催促をしても売主が追完しない場合に代金減額請求ができるようになります。
売主は追完を拒んでも、その次に代金請求を受けてしまうということです。代金請求に関しても、売主が無過失でも買主は請求が可能です。
2)期限の変更について
請求の期限についても大きく変わります。
従来の瑕疵担保責任においては、買主は瑕疵を知った時から1年以内に損害賠償の請求等をしなければなりませんでした。
さらに、損害賠償の金額については根拠を示す必要がありました。しかし、契約不適合責任では、買主は「不具合を知ったときから1年以内」に
不具合の内容を売主に通知するだけでよくなりました。
※会社間の売買等は、売主は買主に対し、商品引渡し後6か月以内に不具合の内容を通知することが必要です。
具体的な賠償額の根拠等を提示しなくても、とりあえず相手方に不適合である旨を通知するだけでよくなりました。
また、万一、売主側が物件引渡し時に不適合を知っていた、または重大な過失により知らなかったなど売主側に一定の責任がある場合は
1年を超えての通知でも適用されてしまいます。
契約不適合責任は「任意規定」であることに注意して下さい。任意規定とは、その項目について契約書に記載がない場合には法律の規定を適用しますが
契約書に記載があるときは契約書の内容が法律よりも優先して適用される性質の規定をいいます。
なお、上記の民法や商法の規定はあくまで契約書に行使期限の記載がない場合のルールを定めたものであり
契約書で行使期限をより短く設定することや長く設定することが可能です。
そのため、契約書で契約不適合責任の免責を定めるなど、期間を民法の規定よりも短く定めることは、民法改正後も可能です。
※不動産取引の分野では、宅建業法第40条により、宅建業者が売主となる宅地・建物の売買については契約不適合責任を免責する特約は無効とされています。
瑕疵担保責任から契約不適合責任に変わることで売主の責任はさらに大きく、重くなります。
2020年4月までに内容を把握し、備えておくことが必要であるとともに、しっかりとした知識を持った不動産業者と取引することが非常に重要となるでしょう。